書評
本田哲三 編「高次脳機能障害のリハビリテーション[DVD付]—実践的アプローチ(第3版)」
澤 俊二
1
1金城大学・作業療法学
pp.1033
発行日 2016年11月10日
Published Date 2016/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200779
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本書は2005年に初版が発行され,以後,2010年に第2版,そして今回の第3版と,約5年おきに版を重ね,既に名高い専門書として定着した感がある.その理由は,高次脳機能障害をどう理解し,どうアプローチをしたらよいか,社会全体で支えるにはどうすべきか,また,職場,さらには社会で,高次脳機能障害をよく理解してもらうにはどうしたらよいか,それらへの回答を,3版まで版を重ねる中で答えていこうと懸命に努力されてきたからではないだろうか.
このことは,第2版との違いをみれば明らかであろう.今回の第3版では,2008年の高次脳機能障害者に対する東京都調査を追加しており,49,508名の総数に対し,認知症者も含まれている可能性を指摘している.また,原因と各症状の頻度については,ほぼ定説が確立されていると述べている.その他にも,新たに脳画像所見の項目が追加され,わかりやすい解説が施されている.また,若年脳外傷者へのアプローチについても記載され,その手法を平易に解説している.そして現在,全国的にホットな話題となっている自動車運転の章も追加されている.全国的に研究活動が活発化しているので,大いに参考になるであろう.制度も含めて記載されており,本人や家族から相談を受けた際の説明に役立つことが期待できる.また,各々の病態をDVDの動画で紹介している.これを視聴しても理解が深まるだろう.さらに,高次脳機能障害の説明用パンフレット見本が付録として収載されている.一般の方々や福祉専門職の方々にとって高次脳機能障害を理解する一助となろう.これらのことからもわかるように,本書は心配りが非常に細かい.
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