書評
『高次脳機能障害のリハビリテーション第2版 実践的アプローチ』--本田 哲三●編
小川 恵子
1
1聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部
pp.408
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101410
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本書の初版(2005年)が出版された後,2006(平成18)年の診療報酬の改定時には,リハビリテーションの長期にわたる継続が制限される中,高次脳機能障害は継続的なリハビリテーションが必要な障害と認められた.つまり国ですら,この障害が日常生活に与える影響は大きく,長期に適切なリハビリテーションを行うべき障害であると認めたといえる.当然,そのアプローチは,エビデンスをもった効果的なリハビリテーションであるべきであるが,高次脳機能障害の症状は多様で,さまざまな職種が手探りで個別に対応していたのが現実であったと思われる.
そこで,現場のセラピストたちが実践の手引き書として活用できると感じたのが本書であった.診断の基準,評価の視点,日常生活の状態に合わせた対応と復職に至るリハビリテーションプログラムが具体的に提示され,「見えない障害」をどのようにとらえ,支援を行うかについて,即運用が可能な内容で,しかも読みやすい文章で紹介されていた.これは,医療福祉に携わる人間だけでなく,障害をもつ対象者の家族にも高次脳機能障害に対応する道標になったのではないかと思われる.しかしながら,高次脳機能障害の研究の発展は著しく,発刊から5年が経過して,その記載された知見に付け加えて他書を参考にすることがあったのは否めなかった.
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