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はじめに
発達障害の子供たちだけを成育医療研究センターにて診るようになるまで,自治医科大学小児科での神経外来,二次健診,療育施設における多職種連携などを経て,成育医療研究センターこころの診療部(児童精神科)における10年以上数千人の発達障害の子供たちに対する診療経験を積み重ねてきた.この自分の診てきた子供たちはどうなるのであろうか.大人までつきあってみたいと思うようになった.こうして2014年5月に世田谷に「どんぐり発達クリニック」を開業した.
クリニックは発達障害を対象とした専門クリニックと位置づけ,小児神経・精神外来に筆者以外の非常勤医師3人にて母に対する診療,子供に対する診療などを行うシステムとした.加えて心理部門にて心理検査,心理カウンセリングを行い,リハビリテーション部門にて作業療法士による感覚統合訓練,学童期以降の訓練としてブレイン・ジムなどを取り入れている.また言語聴覚士による言語訓練,コミュニケーション訓練,学習障害の評価と治療を行っている.臨床心理士には,心理検査〔作動記憶(working memory;WM)評価のAutomated Working Memory Assessment(AWMA)〕,心理カウンセリング,子供と同じ資質を持った親のセミナー,WMであるジャングルメモリー,ロボットを用いたカウンセリングなどを行っている.加えて,ペアレントトレーニング,社会生活技能訓練(social skills training;SST),学習支援などを行っている.家族から希望の多いサプリメント指導,ヨガなども行っている.以上の多彩な治療体系は病態,年齢,発達レベルにより個別に作成し,各部門との密接な連携のもと個別のオーダーメイドによる治療を心がけている.診療には,社会的サポートも必要になるため種々の診断書,申請書などを書くことも必要になり,教育機関,社会資源などとの連携をもちながら診療を行っている.連携を構築するための要となる医療ソーシャルワーカー(medical social worker;MSW)が必要であるが,保険診療上難しいため,現在スタッフには含まれていない.適切な治療を行うために必要な情報を構築するために問診書(文末[参考])を作成し,ホームページ(dongri-clinic.com)にPDFとして提示しダウンロードしてもらい当日持参してもらうようにしている.診察は問診票に加えて,子供の診察と親への問診によりなり,子供と親に平等に接することを心がけ,子供に悲しい気持ちを持って帰ることがないように,親に希望を与えるように心がけている.加えて学習障害に対しては特殊教育の専門家による算数障害,読み・書き障害の学習支援を行っている.さらに,SST,ペアレントトレーニング,発達障害の治療効率は家族機能によるとの持論から両親を別々にグループを作り,夫婦関係も考慮したグループセミナーを行っている.協力機関として東京学芸大学 小池俊英先生による漢字の書字障害に限定した12〜15回の特性に分けたグループ指導,身体認知とリラクゼーションを学ぶための発達障害の親子に限定したヨガ教室などとも連携している(表).
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