世相カセット
選挙・憲法・自由
大原 麗子
1
1TBSテレビ報道制作部
pp.122-123
発行日 1971年6月1日
Published Date 1971/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661916071
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スローガン
統一地方選挙の前半戦が終った。桜の散った東京では,優勢を伝えられた美濃部候補が選挙戦を押しに押して,予想を上まわる史上最高点で再選を果した。世論調査の結果では,都民の半数以上が反佐藤と答える巨大なノンポリ東京で,選挙戦の後半,美濃部陣営から出てきた“ストップ・ザ・サトウ”のスローガンは,“アンチ・ハタノ。非ミノベ”あるいは,その逆を標榜する潜在的棄権者層までとりこみ,決定的に秦野陣営に水をあける結果を齎した。
秦野陣営はといえば,すでに公示の前から,スローガン作戦の誤算でつまづいた。華々しく打ち上げられた“4兆円ビジョン”は,じりじりと上がる物価のなかで自衛する手段さえ乏しい都民の生活感覚とは,あまりにもかけ離れていた。選挙戦が始まって,そのギャップも埋めきれないままに,マスコミ広告,VTR映写会と相次いだ派手な選挙活動が,妙なところでこの4兆円イメージと結びついて,“金をかけた選挙”への反感となってはね返ったことは否定できない。“イメージ選挙”の危険な落とし穴を見た気がした。
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