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実践講座 神経心理学的検査の実際・4
WMS-R
WMS-R
中島 恵子
1
Keiko Nakashima
1
1帝京平成大学大学院臨床心理学研究科
1Teikyo Heisei University, Graduate School of Psychology
キーワード:
エピソード記憶
,
ワーキングメモリ
,
遅延再生
Keyword:
エピソード記憶
,
ワーキングメモリ
,
遅延再生
pp.321-324
発行日 2016年4月10日
Published Date 2016/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200565
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1945年ウェクスラー記憶検査(Wechsler Memory Scale;WMS)が刊行され,1987年ウェクスラー記憶検査改訂版(Wechsler Memory Scale-Revised;WMS-R)となった1).1998年に米国ではWMS-Ⅲに既に改訂されているが,日本版は待たれる状況にある.2001年日本版WMS-Rが杉下らにより刊行され1),現在まで使用されている.
記憶障害は,一般的にはエピソード記憶の障害,つまり,最近個人が経験したエピソードの想起,あるいは新しい情報の学習が困難であることを意味する.WMS-Rは,ワーキングメモリ,エピソード記憶の測定が中心であり,展望記憶,手続き記憶,意味記憶は含まれない1,2).ワーキングメモリは,言語や空間課題の即時・短期の想起のためのシステムであり,新しい情報の獲得(前向性記憶)に関係する.エピソード記憶は,言語・視覚・聴覚課題の保持のための長期システムであり,以前に学習した情報(逆向性記憶)に関係する.ワーキングメモリの中央実行系は背外側前頭前野と関係があり,二重課題の遂行,つまり同時処理に関与する.エピソード記憶は内側側頭葉,間脳,前脳基底核,脳梁膨大部皮質と関係があり,注意力,想起方略,記憶そのものに関与する.記憶に問題をもつ人々は,脳損傷のみならず,急性期の心因性遁走,薬物,一過性てんかん健忘症などでもエピソード記憶の障害が起こる.
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