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特集 認知症予防と治療の進歩
抗認知症薬剤開発の現状と展望
Current status and prospects of drug development for dementia
西村 正樹
1
Masaki Nishimura
1
1滋賀医科大学分子神経科学研究センター認知症研究分野
1Unit for Dementia Research, Molecular Neuroscience Research Center, Shiga University of Medical Science
キーワード:
抗認知症治療
,
アルツハイマー病
,
抗アミロイドβ治療
,
病態是正治療
,
先制医療
Keyword:
抗認知症治療
,
アルツハイマー病
,
抗アミロイドβ治療
,
病態是正治療
,
先制医療
pp.29-34
発行日 2016年1月10日
Published Date 2016/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200473
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はじめに
老年期認知症の約7割の原因疾患はアルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)とされる.本稿では,おもにADに対する治療薬開発について,現状と目指すべき方向性,これからの展望を概説したい.ADの発症要因については,二卵性双生児の症例を対象とした調査から,遺伝率(heritability)が60〜80%と見積もられている1).この数字は,後天的要因の除去のみでは本症の克服が難しいことを推測させる.したがって,治療薬などによる医療介入は欠かせないと予想される.一方で,広義のAD脳病理は50歳台から増加しはじめ,検査上で軽度な認知機能低下を認める人では50〜90歳までに27〜71%に,認知機能が正常な人でも10〜44%に認められている2).今後も人口の高齢化が進むなか,認知症の克服は喫緊の社会的課題と認識され,すでに多くの研究機関や製薬メーカーにおいて,精力的に治療薬開発が進められているところである.しかし,分子病態に基づいた根治治療薬の開発現状は必ずしも順調とは言いがたい.どのような問題点が浮かび上がり,その克服に向けてどのような試みが進められているのだろうか.
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