Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「美術館を手玉にとった男」—残念な状況に埋もれている発達障害者に光を当てる
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.1165
発行日 2015年12月10日
Published Date 2015/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200459
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「美術館を手玉にとった男」(監督/サム・カルマン,ジェニファー・グラウスマン:共同監督/マーク・ベッカー)は,チラシの惹句にあるように,「全米20州,46の美術館を,30年間騙し続けた史上最も善意ある贋作者」のマーク・ランディスを被写体とするドキュメンタリー作品.
ランディスは天才的な贋作画家であることに加えて慈善活動家でもある.自身による贋作も無償で寄贈しているのであり,FBIも罪に問うことができなかった.医師から妄想型統合失調症,パーソナリティ障害などと診断されているが,それだけであろうか.学芸員や大衆を欺いていることに罪悪感がないのも,自分の作り出した論法,換言すれば「俺ルール」において正義だからだ.さらに,興味の限局,記憶を駆使した天才的ともいえる模写力,再現力をみると自閉症スペクトラムの傾向も有していると思われる.
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