故原田彰教授追悼
竹のような男
堀尾 博
1
1東大泌尿器科
pp.980
発行日 1967年11月20日
Published Date 1967/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413200297
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—友の訃を信ずる時が未だ経たず—
アーキーよなぜ黙つて逝つた。「きさまとおれとは同期のさくら」ならぬ竹馬の友だと思つていた。筆まめな君はよく身辺の些事まで私に便りしてくれた。今夏土屋逓信病院長夫妻と欧米外遊中「黄金の雨のごとくふりそそぐリンデルの花を浴びながら,谷の彼方の古城を眺め,うたた親しく交つた昔の一友人を思い出した。西南学派の哲学が盛んであつた当時,家業の医学を嫌い,哲学に転向せんとして空しかつた彼,その彼と共に観たドイツ劇団のアルトハイデルベルヒのかずかずの場面,その友ともたえて会うことなく,知らぬ昔に変りなきはかなさよ……」と,いつもの感傷的な美文の8月20日付の便りが君の最後の筆となつてしまつた。
「明日はフランクフルトで土屋夫妻と別れ,私はラインを経てデユッセルドルフに赴き,以後パリー,ロンドン,マドリッドと,日ごろあこがれの美術館めぐりをしてから,アメリカに渡ります」でふつつりとその後の音信が切れている。世界の美をさぐつて,未だに君の夢の旅がつづいていることとばつかり思つていた。
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