連載 医のなかの想い—ドクター“のぞみ”の院内日誌・1【新連載】
想いは津軽から
小笠原 望
1
1高松赤十字病院第1内科
pp.66-67
発行日 1987年1月1日
Published Date 1987/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921619
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私の勤務する病院の窓から,すぐそこに瀬戸内海が見える.宇高(うこう)連絡船や,島へ向かう数々のフェリーが凪(なぎ)のなか,白い船体を滑らせてゆく日曜の午後の海を,患者さんや看護婦さんと一緒に眺めることもある.
私は,四国の玄関,高松市の600床あまりの高松赤十字病院の内科医師である.医師としての10年のほとんどを,私は高松で過こしている.救急車の音が近づくたびに,びくびくしていた初めての当直の夜,一段落した真夜中に霧笛がびっくりするほどはっきりと聞こえてきた.「港町なんだなあ.霧笛が俺を呼んでいるなんて,まるで演歌の世界だなあ」とため息をついたことを思い出す.
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