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はじめに
慢性末梢動脈病変により生じる疾患を以前は「閉塞性動脈硬化症」もしくは「慢性動脈閉塞症」と呼んでいるが,今では下肢末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease;PAD)という疾患名で呼ぶのが一般的となった.日本では超高齢社会へと突入するとともに,生活様式の変化によるメタボリックシンドロームと呼ばれる動脈硬化をかかえる人が増え,虚血性心疾患の増加とともにPADが増加している現状となっている.また,PADは同じ動脈硬化性疾患である虚血性心疾患や脳疾患を伴うことが多いため死亡率は悪性腫瘍よりも高いといわれ,重症下肢虚血になる前に早期発見により適切な治療や予防を行うことが必要となっている.
PADの臨床症状は,下肢虚血によるもので,臨床症状により間欠性跛行と重症下肢虚血の2つに分けられる.Fontaine分類では虚血肢の臨床症状で4段階に分類している.Ⅰ度は動脈硬化の閉塞はあるが無症状,Ⅱ度は間歇性跛行,Ⅲ度が安静時疼痛,Ⅳ度が潰瘍・壊死である.安静時疼痛と潰瘍・壊死を併せて重症虚血肢とし,Fontaine分類Ⅲ度とⅣ度になる.間欠性跛行は比較的予後が良好で,運動療法や薬物療法といった保存的治療が主体であるが,それに対して重症下肢虚血は予後不良で,死亡や切断にいたる可能性が高く,まずは血行再建の外科的治療が優先となるだけでなく,疼痛管理,皮膚潰瘍管理,感染治療など他科との連携を取りながらチーム治療を行う必要性がある.
PADの診断治療ガイドラインについては2007年にまとめられた下肢閉塞性動脈硬化診断治療指針(Trans AtlanticInter-Society Consensus Ⅱ;TASC Ⅱ)1)が現在の基準とされている.重症下肢虚血を考える場合,まずはPADをTASC Ⅱに基づいて理解し,そのうえでリハビリテーション科として関連各科といかに連携できるかを考える必要がある.
さらに重症下肢虚血の治療目標を救肢とその患者に応じた生活場面に必要な移動能力維持とすれば,リハビリテーション科が早期から関与することが重要であると理解できる.
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