Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「光の雨」―痛切なる革命的主体の狂気
二通 諭
1
1千歳市立北進中学校
pp.575
発行日 2002年6月10日
Published Date 2002/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109793
- 有料閲覧
- 文献概要
「光の雨」(監督/高橋伴明)は私にとって2001年邦画ベストワンである.観ている間の居心地の良さという点でこれに勝るものはなかったからである.もちろん居心地の良さと言ってもそれは極私的なものであり,広く多くの人たちと共有できるものではない.
本作は1972年の連合赤軍事件を扱った立松和平の長編小説「光の雨」を映画化しようとする人々の物語で,14名の同志を殺した“死の総括=連合赤軍事件”が劇中劇として綴られていく.30年前,革命を夢みた若者たちがなぜこのような陰惨な事件を引き起こしたのかについて,今を生きる若者たちがそれぞれの役を演じながら考察を進めていくというもので,当然ながら当時の感受性,言語,思考方法と対峙することになる.本作のモチーフはここにあると言ってよい.つまり,黙りこくってしまったあの世代が今の若者たちにおずおずと語りだしてみたというのが本作の正体なのだ.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.