Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
聴覚障害者としてのエジソン―クラークの『エジソンの生涯』より
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.274
発行日 2002年3月10日
Published Date 2002/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109719
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エジソンに幼い頃の猩紅熱が原因とも言われる聴覚障害のあったことは周知の事実であるが,1977年に発表されたクラークの『エジソンの生涯』(小林三二訳,東京書籍)には,エジソンが自らの聴覚障害を肯定的に捉えていたことを示すエピソードが描かれている.
例えばエジソンは,電信技師として働いた頃を回顧して,「電信機の高い音を間違いなく聞いている時は,他の気をそらすような音を聞かなかった.大きな事務室では隣りの機械の音も耳に入らなかった」と,難聴の効用を挙げている.また彼は,電話機を改良して炭素式送話機を作ることができたのは弱い音が聞き取りにくいために改良の必要性を痛感しからだと言い,蓄音機を発明したことについても,「純粋で素朴な難聴ということが,機械を完成させる実験の原因となった.ピアノ音楽の完全なレコードを作るのに,20年かかったのは倍音が多かったからであり,わたしが難聴だからできたのだ」と語っている.
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