巻頭言
不満はそこらここらに転がっているが……
先崎 章
1
1埼玉県総合リハビリテーションセンター神経科
pp.595
発行日 2001年7月10日
Published Date 2001/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109526
- 有料閲覧
- 文献概要
「急がずに,しかし休まずに(ohne Hast,aber ohne Rast)」ゲーテ
身体に障害が生じる.家族や本人の回復への期待は大きいのが普通である.そして,事実は残酷であるのが常である.完全治癒がありえないことへの不満の前には,障害とともに生きていくという耳心地の良いお題目はふっとんでしまう.
運命のいたずらとしか言いようがない不幸なケースに出会う.そこは,幾千もの生業の中からリハビリテーションを業として選んだ人である.現制度ではどうにもならない限界をつきつけられ,自分の仕事や役割はなんなのかという疑問にさいなまれる.医療制度,社会福祉制度と現体制への不満が疲労を大きいものにする.不幸は自らにふりかかってみないとわからない.今の世のありかたを決めているのは国民のコンセンサスである,という凡庸な有識者の意見には,憤りさえ感じるであろう.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.