Japanese
English
症例報告
左側頭葉後下部梗塞により漢字に選択的な失書を生じた1症例
Pure Agraphia showing Dissociation between Kanji and Kana: One Case Report.
丸山 道男
1,2
,
堂園 浩一朗
1,3
,
村岡 トシ子
1
,
蜂須賀 研二
4
Michio Maruyama
1,2
,
Koichiro Dozono
1,3
,
Toshiko Muraoka
1
,
Kenji Hachisuka
4
1浜松労災病院リハビリテーション科
2福島労災病院
3今村病院分院
4産業医科大学リハビリテーション医学教室
1Department of Rehabilitation Medicine, Hamamatsu Rosai Hospital
4Department of Rehabilitation Medicine, University of Occupational and Environmental Health
キーワード:
純粋失書
,
失読失書
,
漢字
,
左側頭葉後下部
Keyword:
純粋失書
,
失読失書
,
漢字
,
左側頭葉後下部
pp.383-386
発行日 2000年4月10日
Published Date 2000/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109212
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はじめに
中枢神経系の疾患により生じる書字障害には精神障害や痴呆によるもの,意識障害や注意障害に基づくもの,失語症の部分症状,失認・失行の随伴症状,書字に限局した障害(純粋失書),読字と書字に限局した障害(失読失書)などがある.純粋失書は失行,失認,失語がなく,書字に限局した障害であり,1881年にExner1)は左前頭葉第二前頭回脚部の障害を,1978年にはBasso2)が左頭頂葉後方上部の責任病巣を報告している.失読失書は言語理解,発語,復唱は保たれているが読字と書字に強い障害があり,Dejerine3)は角回を中心とした病巣を報告し,山鳥4),岩田5)は左側頭葉後下部の病巣を指摘している.岩田5)は,左側頭葉後下部障害により生じた失書には漢字とかなで解離があるという興味ある報告をしており,以降この領域の損傷に基づく漢字の失読,失書が注目されるようになった6-8).
今回われわれは,従来の報告よりも漢字選択性が明確で症状の持続する失書を経験したので,その神経心理学的特徴と臨床経過を報告する.
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