書評
木村謙太郎・石原享介 編―在宅酸素療法―包括呼吸ケアをめざして
松村 理司
1
1市立舞鶴市民病院
pp.890
発行日 1998年9月10日
Published Date 1998/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108760
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木村謙太郎,石原享介両先生の編集になる在宅酸素療法に関する本書を通読し,久しぶりにすがすがしい気分に浸らせていただいた.書き手は,本の性格上,医師,看護教育者・看護婦,理学療法士,保健婦,ソーシャルワーカーと多種に及ぶが,その主体ははつらつとした在野の勢力である.何よりも,教科書的な知識の羅列ではなく,実践に支えられた確かな知恵や主張に満ちている.記述も具体的でわかりやすいし,データの多くが自前なのでとても説得的だ.だから,「生物学的アカデミズム一辺倒」どころか,「包括呼吸ケア」という言葉が少しも不自然に響かない.
「20世紀末の岐路に立って,私たちは進歩する世界を信じることができるのだろうか.……」本書の序での木村先生の出だしには,医療の本なのに思わず居住まいを正させられた.続く第1章での在宅酸素療法の歴史の記述も,詳しいだけでなく,問題提起に満ち,思索的だ.文章も格調高く,先生の気概が色濃く漂う.
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