書評
―宮城征四郎 監修 石原享介,谷口博之,藤田次郎 編―呼吸器病レジデントマニュアル (第4版)
長谷川 好規
1
1名古屋大学大学院・呼吸器内科学
pp.1081
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101139
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本書は,第一線の臨床現場において呼吸器疾患診療に長年にわたり携わるなかで,診療に真摯に取り組まれ,また,後継となる若き研修医の育成に尽力されてきた第一級の臨床医により執筆されている.本書の基本姿勢が,「臨床医学は万国に共通する“一般常識”の下に取り組まれるべきとする編者の医療哲学と,従来の偏向した趨勢に歯止めをかける目的をもって,若い呼吸器科研修医や専門外の諸先生方を対象として編纂された(序文)」とあるように,実地臨床に密着した,かつ,高いエビデンス・レベルに基づくわかりやすく,使用しやすい呼吸器診療を学ぶ医師のためのベッドサイド診療指針となっている.第1章の最初のページに,「かつて診断の基礎として重要視された問診・身体所見診療法が次第になおざりにされてきている.──(略)──患者の自他覚症状は常に病態・生理学的に解釈を試みることが重要である.」と編者の意図が明確に示されており,大変好感が持てる一冊である.また,呼吸器症状の詳細と診断学的意義の「痰」の項目では,「寝床にティッシュ・ペーパーを置いている場合には,1日痰量が30ml以上,痰壼の場合には100ml以上の痰量を示唆する」と,さらっと記載されており,執筆メンバーの知識に裏付けられた臨床的経験の深さを推測するに難くない.
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