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はじめに
従来,脳性麻痺などによる運動機能障害を持つ子どもへのリハビリテーションにおいては,その身体機能的な問題の改善や精神運動発達全般をめぐる療育的な対応が優先され,精神心理的な側面への配慮や精神心理学的な問題に対する治療が等閑にされてきた1).その結果,このような障害をかかえる子ども自身や家族に,さまざまな情緒障害や行動障害,家族関係の病理が後々認められるようになることが多々指摘されてきた2).
そのため,最近になって,このような子どもたちに対するリハビリテーションや療育の質のあり方が見直しされ始めた.筆者らが所属する療育センターにおいても,近年,小児専門の精神科外来が設置され,包括的な障害児医療が行われるようになった.そこでは,このような障害をかかえながらも自立していく過程において,さまざまな精神心理学的な問題や障害を訴えて受診する患者が増えている.
筆者らは多面的な治療によってこれらの問題に対処しているが,これらの問題のほとんどは,早期支援の仕方の工夫によっては予防が可能であったのではないかと感じている.
そもそも,子どもの運動機能が発達の初期段階から障害されているということは,それ自体が親子の愛着関係の発達を阻害し,後々さまざまな精神心理学的な障害をもたらす危険性を孕んでいる.
親の視点に立てば,障害を持った子どもを授かったという心理的苦悩が子どもの療育のあり方に大きくマイナスに影響する危険性もある.また,身体的ハンディキャップを持ちながら生活することは,子どもたちにさまざまな精神心理的な苦痛をもたらし得ると思われる.
さらに,障害をかかえながらも自立していく時の社会的な環境のあり方や障害に対する偏見,身体的な二次障害などに対する現実的な不安や恐怖は,このような人たちには大きなプレッシャーになると思われる.
ここでは,これらのさまざまな問題を4つの側面に分けて考え,包括的な治療のあり方について考察する.
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