Japanese
English
特集 神経因性疼痛
多発性硬化症の痛み
Pain in multiple sclerosis.
中村 友彦
1
,
眞野 行生
1
Tomohiko Nakamura
1
,
Yukio Mano
1
1北海道大学医学部リハビリテーション医学教室
1Department of Rehabilitation Medicine, Hokkaido University School of Medicine
キーワード:
多発性硬化症
,
疼痛
,
エファプス伝達
,
有痛性強直性痙攣
Keyword:
多発性硬化症
,
疼痛
,
エファプス伝達
,
有痛性強直性痙攣
pp.425-429
発行日 2003年5月10日
Published Date 2003/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100761
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はじめに
多発性硬化症(以下,MS)は,中枢神経白質の脱髄を示す多発性の病巣を特徴とする疾患で,大脳半球,視神経,脳幹,小脳,脊髄に病変が存在する.病巣の多発のみならず,時間的にも多発を示し,症状が徐々に進行していくが,一般的に以下に示す病型がある.
再発-寛解型:再発を繰り返し,完全もしくは部分的寛解があるが,再発がない間は症状の進行がないもの.
一次進行型:初発時より症状がほとんど回復することなく次第に進行していくもの.
二次進行型:当初は再発-寛解型であるが,やがて寛解することがなくなり,症状が進行していくもの.
進行-再発型:病初期から進行し,さらに急性増悪も繰り返し,常に進行性であるもの.
その他に良性型として,発症後症状が改善し,15年経過しても神経学的に障害がないものもある1).
病因は不明であるが,免疫遺伝学的素因を背景に,ウイルス感染などを契機とする中枢神経髄鞘構成成分に対する細胞性免疫主体の自己免疫機序が想定されている.
MSの患者はしばしば疼痛を訴える.病期の進行に伴い障害が進行し,さらに疼痛の出現頻度も増加する傾向にあり,苦痛となるものも多い.そのなかには発作性に症状が出現する有痛性筋痙攣painful tonic seizure(PTS)というMS特有のものもある.本稿ではこのPTSを含めたMSにみられるさまざまな疼痛を,特に神経因性疼痛について,頻度,症状,治療について述べる.
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