特集 高齢者救急の落とし穴─紹介する時,される時
【症状別ピットフォール─atypical presentationを中心に】
めまい・ふらつき—presyncopeや重篤疾患の鑑別を
高良 剛 ロベルト
1
1沖縄県立中部病院 救命救急センター
キーワード:
回転性めまい(G1)
,
浮動感
,
平衡機能
,
失神
,
失神寸前状態(presyncope
,
G2)
,
薬剤性めまい
Keyword:
回転性めまい(G1)
,
浮動感
,
平衡機能
,
失神
,
失神寸前状態(presyncope
,
G2)
,
薬剤性めまい
pp.535-537
発行日 2015年6月15日
Published Date 2015/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200245
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Case
ゲートボール中に繰り返すめまい
患者:73歳,男性.息子さんと2人暮らし.
既往歴:高血圧,慢性腎臓病,高尿酸血症.
現病歴:この1カ月,ゲートボール中にクラクラとするような「めまい」が出現し,自然軽快することを繰り返していると診療所を受診.「ボールを打つ瞬間,クラクラとした」という訴えであり,「目が回った」とのことで,回転性めまいと判断.受診時には,めまいなく,意識状態や血圧などのバイタルサインは正常,神経学的所見も問題なかった.心電図・血液検査も特に問題なく,再現性はないものの良性頭位性めまいの疑いで内服薬にて経過観察とした.
その1カ月後,同様の訴えにて受診あり.その1週間後にも同様の訴えあり.4度目の受診時,症状が繰り返しているということで,経過観察ベッドにて心電図モニター下に経過を見ていたところ,症状出現時に高度徐脈あり,最長6秒の洞停止を認めたため,洞不全症候群として緊急に循環器科に紹介し,ペースメーカー挿入となった.
教訓:高齢者の訴えるめまいは,症状の聞き取りが診断に大きく寄与するが,表現力や理解力の違いなどもあり,気をつけないと誘導尋問になりかねないことを肝に命じる.毎回ひととおりの鑑別,特に脳神経系・心血管系の評価は怠らずに繰り返し行うべきである.また,特に診察時無症状の時は,オーバートリアージで重篤な疾患の可能性も必ず鑑別に入れておくことを忘れない.このケースは毎回心電図チェックをしていたが,たまたま受診時に症状があり診断しえたケースである.
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