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はじめに
脳性麻痺(cerebral palsy;CP)は疾患単位ではなく,運動障害を主症状とする症候群,あるいは状態像である.症候群としては,①運動・姿勢の永続的障害,②運動・姿勢障害の病変は脳にある,③脳病変が生じた時期は脳の発育期(未熟な時期),④脳病変を起こした原因は問わないが病変は非進行性になっている,の4条件が必要条件である1),脳病変を来した原因を問わないために,脳奇形,感染,循環障害などいろいろな原因が含まれている.病変としては,形成不全を含み,広範な脳損傷となりやすい.その結果の運動障害であり,不随意運動の出現である.成人のような限局した脳循環障害により生ずる不随意運動やひとつの疾患単位のなかで示す不随意運動とは,様相が異なる.不随意運動を2つ以上合わせ持つことも多い.また発育期に起きた脳病変であるため,脳の成熟と共に運動障害・不随意運動の様相は著しく変容する特徴がある.
CPの不随意運動の分類は,報告者によって異なっている.そして不随意運動を表す用語として,同じ単語を用いていても不随意運動の性状は,報告者によって微妙に,あるいは明らかに異なっていることがしばしばである.成人の神経学で使用されている同一用語とは内容が異なることもある点を先にお断りしておきたい.たとえば小児神経学領域では,ジストニア(dystonia)は広範囲に用いられ,正常児やCP児の運動発達過程での一過性の姿勢や運動にも用いられている.また筆者の個人的見解であるが,CPでアテトーシスと一括して表現されているなかに含まれている上肢の運動の一部は,成人のハンチントン舞踏病にきわめて類似している.
このような未整理・複雑さを含んでいることを前提に,以下,CPの不随意運動について述べることにする.原著者の用語をそのまま使用するよう心がけたが,前後の関係で多少用語を変えている点がある.したがって,用語の内容に疑問を感じられた際には,原著書を確かめていただきたい.
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