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はじめに
肢体不自由に関する身体障害者診断書・意見書1)には,一般に用いられるものと脳原性運動機能障害用の2様式があり,適宜使い分けることになっている.身体障害者障害程度等級表解説には,「乳幼児に係わる障害認定は,障害の種類に応じて,障害の程度を判定することが可能となる年齢(概ね満3歳)以降に行うこと.」と記載があり,脳原性運動機能障害については,「この障害区分により程度等級を判定するのは,乳幼児期以前に発現した非進行性脳病変によってもたらされた姿勢及び運動の異常についてであり,具体的な例は脳性麻痺である.」となっている.
現在,大多数の脳性麻痺の診断は3歳未満でついており,仮に3歳で身体障害者診断書・意見書を作成しようとすると,2様式のうちどちらを使用するか問題となる.しかし,実情として一般の様式を使用しており,その理由として,脳原性運動機能障害の様式が,「乳幼児期の判定に用いることの不適当な場合」と判断されるからである.具体的に言えば,脳原性運動機能障害の上肢機能障害には3歳程度ではほとんど経験しないような紐むすびや爪切り,そで口のボタンといった項目があり,全く異常のない幼児に対して1級の判定をすることも可能である.では,脳原性運動機能障害の様式の対象となりうる小児の規定はとなると明確にされていない.これまでのところ,伊藤2)は「ADLが完全に自立する学童期以降であれば,脳原性運動機能障害の診断書を利用するほうが有利である.」と述べている.
そこで今回,診断書の対象としての学童期前の小児について検証するため,上肢機能テストにある紐むすびテストをとりあげ,4~6歳の正常児の評価をすることにした.このテストは,両上肢機能障害に対して用いるものであるが,多くの脳性麻痺児が両上肢に障害を有することを考慮したものである.
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