巻頭言
脊髄損傷患者の障害受容とインフォームドコンセント
岩坪 暎二
1
1労働福祉事業団総合せき損センター泌尿器科
pp.1033
発行日 1996年11月10日
Published Date 1996/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108233
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脊髄損傷(脊損)の医療に携わって17年,いまもってインフォームドコンセントのやり方に苦しむ一人である.
脊損患者は急性期に間欠導尿をしていると,やがて膀胱麻痺から回復するが問題の残る人もいる.健康とQOLを願えば個々人に合った排尿法の選択は幅広くしかも厳密であるべきで,画一的な治療はありえない.例えば,完全麻痺者のほとんどが失禁性排尿対策に集尿器を用いるが,排尿筋括約筋協調不全が見つかると括約筋切開手術が必要になることがある.脊損者の排尿病態は尿流動態検査で早期に診断し合併症を起こさぬうちに治せる時代になった.しかし,「元の身体に戻らない」と思わせるような手術の必要性をどう理解して貰うか,説明に腐心し実現には苦労する.助かりたい一心で受けた急性期の脊椎外科手術にくらべて,回復期の泌尿器科手術は嫌われる.自律神経過緊張反射や発熱発作で苦しんだり,形がくずれた膀胱や腫れ上がった腎臓のX線写真を見せられるまでは医者が信じられないらしい.
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