巻頭言
言語障害のリハビリテーション―最近の話題から
綿森 淑子
1
1東京都老人総合研究所
pp.725
発行日 1994年9月10日
Published Date 1994/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107683
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言語障害のリハビリテーションの分野にこのところ明るい展望が見え始めている.第1は,大学におけるST養成を目的とした学科の開設である.1991年4月の川崎医療福祉大学を皮切りに,本年4月には北里大学,そして来年は4年制の私立大学1校と3年制の公立短大1校が新設予定となっており,大学レベルでのST養成がいよいよ本格化する.このことは知識・技術レベルでのST教育の「標準化」を可能にするばかりではなく,大学という恒常的な研究機関の設置によって,これまでST個人の努力に依存していた研究面での環境が改善され,格段の発展が期待できる点でもその意義は大きい.
第2は,STの専門性に関わる学術面での前進というべき言語障害臨床学術研究会の設立である.医学系の学会では,発表時間が短く,実のある討論が行えないという制約があった.一方,ST固有の学会活動は,日本聴能言語士協会と日本言語療法士協会に事実上分かれて行われているため,総合的な交流は進まなかった.また,多忙な臨床のかたわらこつこつとデータを積み重ねているSTは少なくないが,研究指導体制がないこともあり,せっかくの成果が論文の形で公表されず退蔵され,共通の資産としての知識の蓄積につながっていかないという問題があった.
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