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はじめに
アメリカでは1990年に交通事故で46,300人が死亡し,銃器による自殺,殺人,事故で37,000人が死亡している.どちらも頭部外傷の実数を直接示すものではないが,頭部外傷の多さを推測するには十分説得力のある数字であろう.
頭部外傷の実数を把握することはきわめて困難であるが,Kraus1)は1985~1987年のデータから,1990年に1,975,000人が頭部外傷(脳外傷のない頭部外傷を含む)のため治療を必要とし,366,000人が入院し,75,000人が死亡すると推定している.
頭部外傷は青年層に多いので,その社会的損失は重大で,頭部外傷のリハビリテーションがアメリカにおいていかに重大な社会的要請を受けているかが明らかである.
長期入院が困難なアメリカでは頭部外傷のリハビリテーションはその内容とともに形態が試行錯誤されており,10年前60であった頭部外傷の特別なプログラムは現在では600を数えるという2).なかでもNew York大学(以下,NYUと略)Rusk Institute of Rehabilitation Medicine(以下,RIRMと略)はRuskら4)が1970年に頭部外傷のリハビリテーションの報告をしているように,その歴史は古く,特に高次脳機能の治療的研究ではDillerら5)の脳卒中片麻痺患者の病棟内事故の行動学的分析にはじまり,Gianutsosら6)の記憶障害に対する訓練,Weinbergらの半側無視に対するScanning訓練7),空間認知訓練8),Gordonら9)の統合的認知訓練など臨床的な研究を多く行ってきている.また1976年からは頭部外傷患者に対する特別な訓練プログラムを開発し,良好な復職率を達成している.
本稿では筆者が参加したアメリカの学会での報告と最近のReviewからアメリカにおける頭部外傷のリハビリテーションの現状を紹介するとともに,NYU Head Trauma Programの内容と,これまでの成果を報告し,考察を加える.
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