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はじめに
当施設は130床定数の身障更生施設であるが,常時約10%の頭部外傷者が入所している.隣接して神奈川リハビリテーション病院が設置されており,リハビリテーション訓練はこの病院機能の中で行われている.施設における生活指導部門は,この病院のリハビリテーション訓練と連携して並行的に実施している.病院での治療的対応の終了段階から社会参加していく過程での橋渡し的役割を担っており,社会参加を直接的目標としたリハビリテーションの展開を図っているといえる.
当施設での生活指導としての対応は,ADL改善,生活管理の工夫から市街地移動訓練や通勤訓練さらには家族指導等までも含んで広範囲に及んでいる.指導職員は担当制により入所から退所までを一貫して責任を持つが,生活指導は全職員が担当している.
頭部外傷者に対する生活指導上の留意点としては,①身近かで具体的な指導目標の設定,②一貫した指導姿勢,③意欲や自発性の引き出し,④自分の障害を自覚させること,⑤問題に対しての対処方法を編み出させること8)等が特に配慮されている.
また施設利用の目的は頭部外傷者個々の社会的活動度1,11)を向上させることであり,施設での生活指導の努力は全てここに収斂されている.しかし指導の限界や困難性を覚える事例も少なからずあり,今後の対応課題となっている.
本稿では当施設における頭部外傷者の入所利用実態を分析し,その社会的リハビリテーションについて考察する.今回の分析対象とした頭部外傷者は'88年度以降に入所し,'92年度までの5年間に退所した50人(男44,女6)で,入所時平均年齢は28.3±10.5(最低16歳,最高57歳)である.なおほぼ全員の対象者に記憶障害等の高次脳機能障害が認められた.また退所時の移動能力は,独歩30人,杖歩行8人,車椅子13人であった.
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