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はじめに
一般に,肥満症はいわゆる“肥満”が主体で,本態性肥満ともいわれる単純性肥満と,何らかの基礎疾患により肥満の病態を発現する症候性肥満の2種類に大別される.症候性肥満は原則的には基礎疾患の改善に伴い肥満は解消する.肥満症の90%は単純性肥満が占めるといわれており,一般に肥満症とは単純性肥満を指す1).
単純性肥満(以下,肥満症と略す)の成因としては,過食,食習慣の変化,遺伝,運動量減少などが考えられるが,とりわけ食物供給の増加,食事の西欧化による食事内容の構成の変化,ストレス解消の手段などによる過食と,乗り物などの社会習慣や生活様式の変化に伴う日常生活での運動量の減少,不足が重要な要因として挙げられる1,2).近年,これら生活様式,食生活の変化に伴い肥満症患者は増加傾向にあり,その症状も重度化の傾向にある.
これまで肥満症治療については様々な報告がなされているが,肥満症治療の原則はエネルギー出納のバランスを長期的,かつ継続的に負の状態に保つことにあり,減食による摂取エネルギーの制限が治療の主体を占めているといえる.しかしながら,食事療法のみでは減量効果が停滞する適応現象が必ず出現するので,最近では食事療法に運動療法を加え,適応現象を克服する併用治療が重視されるようになり3),リハビリテーション科の理学療法部門が運動療法を行い協力するようになった.
当院第3内科では,通常の食事療法では効果の不十分な重症肥満患者に対して,超低エネルギー食(very low calorie diet: VLCD)を用いた半飢餓療法により肥満症治療が行われてきた.
半飢餓療法4,5)とは,1日の摂取エネルギーを200~600kcal以下に制限する食事療法である.これは重症の肥満症や,通常の低エネルギー食ではなかなか痩せられない治療抵抗性を示す肥満症に用いられ,短期間に大きな減量効果を得ることを目的としている.また半飢餓療法においては,絶食療法にみられるような重篤な副作用を防止し,かつ絶食療法に匹敵する体重減少効果が得られるといわれている.
これまで糖尿病を中心とした運動療法の治療目的・効果については,いくつかの報告があるが,特に肥満症に対し半飢餓療法と併用された運動療法の報告は極めて少ない.
そこで今回,我々は半飢餓療法による肥満症治療において,運動療法が及ぼす効果について検討するとともに,運動療法のあり方について若干の知見を加え報告する.
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