巻頭言
ある患者さんの手記から
畑野 栄治
1
1広島大学整形外科学教室理学診療室
pp.479
発行日 1989年7月10日
Published Date 1989/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106082
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手術後長期にわたり切断部の激痛を訴え,リハビリに苦労した患者さん(40歳)の手記を披露する.退院時に患者さんに書いていただいたものである(―は省略).
『部下数人とともに交通検問中,白い乗用車が私に激突した.―収容先の病院では入れ替わり立ち替わり医師や看護婦が私の右足を見にきたが,私にはただ見にきているだけ,という程にしかわからなかった.数日後,血管の撮影が行われ,終了後に義足の使用のことを告げられた.―新聞に広島大学病院では,切断した指でも接合したとの記事が掲載されたのを思い出し,主治医に転院を申し出て入院することができた.―しかしその後,主治医から「もうダメだ.切断しかない」と告げられた.―気は打ち沈んでいくばかりで「死んでしまおうか」とさえ思うようになり,―何故私がこのような苦しみと不幸を背負わなければならないのであろうか.私が一体何をしたというのだ.―加害者に対する憎しみもこみあげてくる.―殺してやりたいほどであった.―このように打ち沈んだ私に母も覚悟を決めたのか,「戦争中など野戦にいきたくない兵隊は自分の足を銃で撃っていた.
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