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はじめに
現在日本では,道路交通法88条および同法施行規則23条により,90ホンの警音器(ホーン)の音を認知できない者は,自動車運転免許を取得できない(補聴器使用可).このような高度難聴者は日本に数千~1万数千人いると推定される1).一方,筆者らの予備調査によれば,欧米諸国では完全聾者にも運転免許を与えている国が大半であり,例外はスウェーデンと香港ぐらいである.従って「聴力によらず免許を与えるように」との聾唖者団体の要望は一考に値すると考えられる.しかし,一般に行政当局の対応は消極的であり,また諸外国に比較して貧弱な道路事情も考慮されなければならないであろう.
こうした状況に対する一つの技術的対応として交通雑音の中から運転に関する重要な音情報のみを検出し,これを光または振動刺激に変換して運転者に提示する信頼性の高い装置を開発することが考えられる.米国で開発中のサイレンモニタはその一例である2).しかし,この装置ではサイレンのみしか検出できず,誤動作が生ずる点でも問題がある.別の試みとして日本でも,1975~76年に厚生省の研究グループが電子装置の開発を行っている3).この装置の最大の問題点は電子サイレンを検出できないことであり,また持続の短かい信号を見のがしがちな点でも問題がある.
こうした問題を解決すべく,筆者らは新たな電子装置の開発を行っている.本装置では(運転に関与する音情報のうち第一義的と考えられる)警音器の音,緊急自動車のサイレン音,鉄道踏切の警報音(以下,まとめて交通警戒音と称す)を実時間で自動的に検出することを目標とする.本論文では,第Ⅰ章で装置の概要と動作原理を説明し,第Ⅱ章で性能試験の結果について報告する.なお,装置の開発の経過,電子回路の詳細については別報4~6)を参照されたい.
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