Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
高齢者の自動車運転事故の特徴
近年,高齢者の痛ましい交通事故の報道が絶えない.警察庁交通局によると,2020年中の交通事故は,309,178件で,その内訳は,軽症279,946件,重症26,448件,死亡2,784件であった.そして,年齢層別の免許保有者10万人当たりの交通事故件数は,図1のように,75歳を超えると急激に増加していた1).一方,2019年度中に発生した死亡事故の人的要因を75歳以上と75歳未満で比較すると,75歳以上では,ハンドル操作ミスやブレーキとアクセルの踏み間違いなどの,「操作不適」が多かった(図2).そして,操作不適の中では,ハンドル操作不適とブレーキとアクセルの踏み間違えが,それぞれ,75歳以上では,13.7%,7.0%に対し,70歳未満では,11.3%,0.5%であった2).すなわち,ブレーキとアクセルの踏み間違え事故が高齢者では著しかった.
Makizakoら3)は,3,421名の運転免許を有する高齢者(平均年齢:71.7±4.9歳;56.3%男性)に行ったアンケート調査によると,53.8%の人が運転中にニアミスを起こしており,その原因は,注意障害と関連があったと報じた.また,Samuelら4)は,高齢者の事故の大半は,交差点で起きており,高齢者は,中年の運転手よりも交差点に入った後に潜在的なリスクに注意を払う可能性がはるかに低いと述べている.さらに,Bélangerら5)は,高齢者の運転技能を運転シミュレータで若年者と比較した結果,高齢者では同時に多くの操作を要するときに,若年者と比べて事故率が高くなったと述べている.ここでいう「同時に多くの操作を要する」とは,後述の配分性注意を意味している.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.