職業的リハビリテーションの今後の課題

The Problems Awaiting Solution in the Field of Vocational Rehabilitation.

はじめに

　わが国の職業的リハビリテーションは，多岐にわたる法制度のもとで，それぞれの領域において職業評価，職業指導，就労前準備，職業訓練などの各種サービスが行われている．最近部分的には制度的な改善や技術的な進歩が認められるが，職業的リハビリテーションあるいは医学，教育，社会の各分野を含めたリハビリテーション全体を眺める視点が欠けていることは否めない．また，これら個々のサービスの原点となる職業的リハビリテーションの定義，目的，対象とする障害者，といった基本的な原則に関して十分な論議の機会がなく，各行政が担当する法制度の条文にその片鱗が見られるものの，関係者に共通の認識として受け入れられるようなものは確立されていない．

　職業的リハビリテーションの一貫したサービスの提供，地域におけるサービスシステムの確立，あるいは重度障害者の就労対策など，職業的リハビリテーションの領域全体が取り組まなければならないさまざまな問題が提起されながら思うように進捗しない原因の一つも，リハビリテーションの過程全体を眺める視点の欠如と，基本的原則抜きでの断片的な対症療法的サービスにあるのではないかと思う．