Japanese
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講座 機能修復(3)
骨・軟骨損傷の回復過程
Repair of Bone and Cartilaginous Injury.
林 𣳾史
1
Yasufumi Hayashi
1
1東京都養育院付属病院整形外科
1Department of Orthopedics, Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital.
キーワード:
コラーゲン
,
骨癒合
,
軟骨修復
Keyword:
コラーゲン
,
骨癒合
,
軟骨修復
pp.543-549
発行日 1985年7月10日
Published Date 1985/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105419
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はじめに
人類など陸上生活をする脊椎動物はその生命および種を維持するために個体を移動させなければならない.この点,水中で浮力を利用して移動している魚類などの脊椎動物に比べ不利である.このことは機能回復訓練をするうえでプールの中で歩行するより,訓練室で歩行する方が負荷が大きく困難を伴うことが多いことからもわかる.
移動するためのエネルギーの源は筋細胞の収縮・弛緩といった単純な動きであるが,この力を有効に地上に伝え,個体をスムースに移動させるためには強靭な支持機構と力の方向を転換する滑車が必要となる.個体を素速く,複雑に動かそうとすればするほど,また生物の進化と共に個体の重量が大きくなればなるほど支持組織は強靭さを要求され,滑車は負荷に耐えうる複雑な機能が要求される.また強靭な支持組織も,負荷に耐えうる滑車も個体の成長・発育と共に増大する必要があり,物理的・化学的・生物学的損傷に対して修復しつつ,人類の場合100年間近くも機能しつづけなければならない.そのためには物理化学的に安定性があり,生物学的に活動性を有する必要があり,これらの必須条件を満たす支持組織・滑車はいかに結晶性の高い鉱石でも,繁殖力の強い生物でも適さない.若干の欠陥があっても骨と軟骨がこれを満たす.
そこで骨組織については強靭さを有し,かつ生物学的な活動性を有する機構について述べ,関節については軟骨の荷重に耐えつつ巧みな潤滑作用により摩耗を防いでいる機構について述べる.続いて骨・軟骨が大きな力学的損傷を受けた場合,または小さな慢性的な繰返し外力や生物学的侵襲を受けた場合の修復過程について述べる.
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