Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
パーキンソン病は本態性パーキンソニズムまたは振戦麻痺Paralysis agitansと称し,多くは中年期以降に初発する慢性進行性の変性疾患である.40歳以前に発症する若年性パーキンソニズムもこれに含まれる.
本症の本態については錐体外路系とくに黒質および線条体を中心とするdopamine(DA)代謝異常が近年明白にされ,治療面でも従来の副交感神経遮断剤(抗choline剤)と共にL-DOPAおよびその代謝に関連する薬剤が広く用いられるようになった.つまり線条体におけるacetylcholen(Ach)活性は抑制し,黒質などのDA活性を高めるのが治療の原則であり,そのほか病態に応じた適切な薬物の選択や投与法が重要となる21).
本症の三大主症状は固縮(筋強剛),振戦(静止振戦が主体),無動(軽い場合は寡動)である.これに姿勢反射障害を加える場合もある.その他随伴症状として,仮面様顔貌,脂顔,流涎,言語緩徐~小声,前屈姿位,歩行緩徐および小股歩行,突進現象,書字障害~小字症,膀胱障害,便秘,発汗異常,血管運動神経障害など多彩な症候を示すほか,洗面・食事・寝がえり・着衣・用便など日常生活動作(ADL)にも著しい支障を来し,また抑うつ,無気力,自己中心的念慮,幻覚,さらには痴呆などの精神症状を伴うこともある.
本症の重症度はM. Yahrに従い,Ⅰ度(一側性,軽症),Ⅱ度(両側性,姿勢変化),Ⅲ度(歩行障害著明,立直り反射不良,中等度のADL障害),Ⅳ度(著明なADL障害),Ⅴ度(完全廃失)に分類される.一般に治療による経過の改善は多少に拘らずみられるが,結局は慢性進行性の一途を辿り,日常生活上の支障は漸次増強する.しかし患者の管理および薬剤選択投与の工夫により症状は維持または改善され,近年予後は比較的良好となりつつある.
本症の薬物療法は患者の発症年齢,経過,臨床症状の特徴,重症度,合併症の有無などを考慮して,第一選択を如何にするか,併用の場合の投与法,などを決定する.DA求心系およびAch遠心系におけるニューロン各部位に作用する各種抗パーキンソン剤を図1に示す.
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.