巻頭言
なぜリハビリテーションか?
坂口 亮
1
1心身障害児総合医療療育センター
pp.775
発行日 1983年10月10日
Published Date 1983/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105038
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最近は一種の流行語にもなっている「リハビリテーション」は,時と場,また人によって捉えられ方が違う.「医学的リハビリテーション」と「リハビリテーション医学」なども語順が逆というだけで,違う次元のものだそうである.砂原茂一著「リハビリテーション」(岩波新書)によく説明されているが,「リハ医学」のほうは,方法的に運動機能の回復や再建を目ざすもので,従来の整形外科から発したという.確かに整形外科医は(私をも含めて),入門当初から治療とリハらしきものを表裏一体に叩き込まれて来た.それだけに,事改めてリハの意義が唱えられたりするのを聞くと反撥に似た気持が起こるものである.現に戦前からポリオや戦傷者などを相手にこの道何十年という整形外科の長老は,リハ医学会の重鎮でありながら,時には一見リハに水さすような言動をされることもある.机上のリハ論議にはきわめて厳しい.
長老は兎も角,私でも時に起こるリハへの拒絶反応は,前述の砂原先生の著書でも戒められ,それは私にもよく理解できる.リハ医学会に出てみると,(記念すべき第20回が,祖父江逸郎会長の下有意義に幕を閉じたところである)整形外科が伝統的にやって来たリハビリテーションだけでは不十分で,さらに広く,深くリハ医学の知識と技術を導入しなくてはならないことを痛感させられる.リハという共通の目的のために,内科と整形外科を中心に関連する専門科目が垣根を取り払って手をつなぐ意義は大きい.各科の長短補い合ってリハ医学のレベルは一層の向上が期待できる.こうして「リハ医学」なる専門分野の存在は社会からも求められ,次は専門医制度も必然の過程として軌道に乗った.
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