巻頭言
“リウマチ”とリハビリテーション
腰野 富久
1
1横浜市立大学医学部整形外科
pp.509
発行日 1983年7月10日
Published Date 1983/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104979
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慢性関節リウマチ,これほど民間に誤解されている疾患もなかろうかと思われる.関節痛があれば,すべてリウマチだと思われている.したがって,このようないわゆる“リウマチ”が完治したという噂をきけば,慢性関節リウマチそのものを治せる所があると勘違いして,患者は右往左往する.慢性関節リウマチは古い疾患で,昔よりさまざまな民間療法が行われ,現在でも広く行きわたっている.またその上,呪術や迷信の類まで根強く残っているようである.これには疾患の範囲が判然としないこと,および治療法に決定打がないことなども禍していると思われる.実際の医療でも種々な方法が主張されていて,医師といえども迷うことが多い.これらの多くはまだ批判に十分耐えていないのが,現状である.
慢性関節リウマチに関するこれらの現状は治療方針の統一性を欠き,さまざまな悪影響をきたしていることもある.これは患者のみではなく,医師の側にも患者に対する指導が不足しているのではなかろうか.また近年では,単なる対症療法の一部を取り扱っているものをあたかも根治療法が完成されたかのごとく報道されることがある.このことは,慢性関節リウマチという象の一部を触れているにすぎないものを,あたかも象を生け捕りにしたかのごとき錯覚を読者に与え,藁をもつかむ思いでいる患者は,慢性関節リウマチがすべて解決されたかのように勘違いして,盲目的にそれに走っていることもある.批判的な意見も同時に掲載すべきものと考える.
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