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はじめに
膠原病は全身症状をもち,多臓器障害性の炎症疾患である1).血清中には多彩な自己抗体が出現し,少なくともそのあるものは病因,病態形成に重要な役割を果たしている.また膠原病の発症には遺伝,環境の問題が関係していることが一卵性双生児の研究や家系調査の研究から明らかにされている.
膠原病は多臓器障害性の疾患であるため,皮膚,筋肉,関節,腎臓,消化管,肺臓などが同時にまたは経過中に出現し,臨床像を複雑にしている.しかし全身性エリテマトーデス(SLE)の蝶型紅斑,強皮症(PSS)の皮膚硬化,多発性筋炎(PM)のヘリオトロープ疹など皮膚症状一つを取り上げても疾患に特異なものがある,また関節症状もSLEの非破壊性,非変形性の関節炎と慢性関節リウマチ(RA)の進行性破壊性変形性関節炎という工合に,それぞれ異なった臨床的特徴をもっている.
膠原病の診断には,疾患に特異的な検査所見がないので,各疾患にみられる臨床症状と検査所見の組合せで行われる.
このような診断手続で診断をすると,ときに確実なSLEに慢性の破壊性変形性関節炎がみられることがある.そのような症例は,診断基準ではSLEとRAをともに満足するものである.したがってその関節炎がSLEのものであるのか,RAであるのかということが問題となる.かりにSLEの立場に立ってみると,RAと鑑別不可能な関節症状を呈するSLEといえるが,RAの立場でみると,SLE症状を呈するRAともいえる.しかし膠原病における病変形成機序は,未だ完全に解明されたわけでなく,その関節症状がSLEなのかRAなのかに関しては全く不明である.そこで教室では,このような症例はSLEとRAのOverlap症候群(OL)として別個に取扱おうという立場をとってきた2,3).
その後SharpらによってSLE,PSS,PMの臨床症状をあわせもつような症例をmixed connective tissue discase(MCTD)という概念で考えようとすることが提唱され4),これまでOLとして取扱ってきたものまでを含めて考える傾向が出てきた.かかる意味でOLとMCTDの異同を明らかにする必要が生じてきた.
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