Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
身体障害者(以下身障者と略す)特に下肢に障害を持つ人びとにとって自動車の示す機動力は無視する訳に行かない.彼等が自由に自動車を駆使することが出来れば少なくともその間の移動能力は一般の人びとに較べ遜色なくなるからである.
自動車の利用法には身障者自身が運転する場合と第3者の運転に委ねる場合に分けられる.従来自動車運転訓練は就業の際に勤務先の往復に利用したり自主営業の注文取りのために利用するなど主に就労関係者を中心に行われていた.
しかし最近では社会生活を送るための必要な手段として,運転能力ある者は技術を身につけ,積極的に社会活動に参加すべきであるという考えが定着し,身障者の間にも免許取得希望者が増加して来ている.
この背景には,社会復帰する身障者が増えたことも勿論であるが,自動車免許制度をも含めた自動車所有のための法的措置の改善,訓練指導技術の向上と共に,自動車の運転機構自体が大幅に改良されたことも大きな影響を与えている.現に身障者が使用している「身体障害者用自動車」のほとんどは,自動車そのものの機構は基本的に変えずに,運転する身障者の障害に応じて2,3の器具を取り付けたいわゆる「特殊装置付き自動車」とも呼ばれるべき車であるに過ぎない.
表に示される様に身障者の自動車運転免許保有者は5年前に較べ倍以上に増え昭和55年12月現在で10万人を突破している.これは下段に示される全国の運転免許保有者の増加率28.4%に比べ可成り高い増加率を示している(表1).
国立身体障害者リハビリテーションセンター(以下センターと略す)では前身の国立身体障害センター(以下旧センターと略す)で昭和36年に自動車運転技術訓練を開始し,既に500名を超える合格者を送り出している.その後全国各地に身障者用自動車教習所が開設され,昭和55年12月末現在で1,430ヵ所を数え,昭和55年度の免許取得者は4,501名と報告されている1).
この様に身障者自身の運転免許所有者が増加して来ているのに対して,身障者を運搬する公共の障害者用自動車(又はバス)等の開発は立遅れていると云わざるを得ない.僅かに関連施設や病院などに車椅子昇降用のエレベートバスが普及したこと,タクシーなどが車椅子使用者に対し理解を示すことが多くなって来た程度にすぎない.
身体障害者用自動車については本誌では既に1975年7号で移動手段の特集を取り上げその中で2,3報告されている7,6).
今回はその後のセンターでの訓練結果をも加え,身障者の自動車運転訓練を中心に現況と問題点について述べる.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.