Japanese
English
講座 脊柱(3)
脊柱の生体力学的考察
Spine. 3. Biomechanics of the Spine.
大井 淑雄
1
,
渋谷 光柱
1
Yoshio Ooi
1
,
Koji Shibuya
1
1自治医大リハビリテーションセンター・整形外科
1Rehabilitation Center and Department of Orthopaedic Surgery, Jichi Medical School.
キーワード:
椎間板内圧
,
モーションセグメント
,
腹腔内圧
,
弾性係数
Keyword:
椎間板内圧
,
モーションセグメント
,
腹腔内圧
,
弾性係数
pp.732-741
発行日 1981年9月10日
Published Date 1981/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552104612
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はじめに
腰痛や背痛がおこる背景にはいろいろな要因が考えられるが,なかでも脊柱の全体あるいは部分的な力学的変化,異常そして力学的弱点が関連が深いと思われている.人間が起立する動物となったが故にその犠牲として腰背痛を運命的に持つようになったとよく云われる.脊柱を,材料力学的検討を加えるべく一種の支持組織と考え,その材料力学的特性を測定により明らかにし,ついで椎間板の同様な検討を試みてみよう.さらに終りの幾らかの紙数を姿勢postureというものに言及してみよう.
脊椎をin vitroで種々の応力を加えその変形や破壊の過程を見ることにより①どの部分にもっとも応力が集中するか,②正常の応力がかかる場合どの部分が弱いのか,③生体で痛みを生ずるくらいの応力の大きさはどの程度のものか,などを知りもしくは推測することが出来る.これら脊椎自体に関する材料力学的実験は我々臨床医が腰背痛の原因がかなり力学的要素を持ち,このような実験のデザインにより病因が明らかになるだろうと大いに期待して行われるものである.しかしながらこれらの実験を進めて行くと読者も人間の日常生活といかにかけはなれた次元で行っているかというような印象を受けるであろう.
理想的なモデルでは脊柱は各分節が関節で上下に連結し,弾性係数の異なる力学的特性を持ち,屈曲伸展,側屈そして回旋運動を行うものである.また同時に重い物を持ち上げるようないろいろな日常の身体動作が脊柱に伝達され,それに耐えられるべきである.
さらに脊椎と椎間板のモデルのみならずここには胸腔と腹腔という体腔,それと脊柱をとりまく筋肉というものが総合的に考慮され得るよう注意すべきである.
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