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はじめに
“完全参加と平等”をテーマにして,国際障害者年がスタートした.
冒頭の標題も身体障害者と関係の深い問題で,声帯を失った喉頭摘出者は,社会復帰をめざして日夜声をとりもどそうと必死の努力をつづけている.
喉摘後の発声法には,
1.人工喉頭
2.エレクトロ・ラリンクス(またはネオボックス),E.L.
3.食道発声
4.喉頭形成術による発声
などがある.1と2は,発声補助具を使用するもので,3と4は,自分の力で発声する方法である.ただし4はその歴史も浅く特殊の方法で,現在まだごく少数のために今回は省略することとする.
私は約30年前より,(その当時は,ほとんどの喉摘者が人工喉頭を使用していた),発声訓練をうけることにより,自分の体を使って話すことの可能な食道発声法の全国的普及に奉仕し,今日まで成果をあげつつある.それは器械に頼ることのない自分自身の肉声であるから,身体障害者というコンプレックスをほとんど感じることなく,社会復帰,職場復帰ができるからである.
しかし最近の喉頭悪性腫瘍の治療法の傾向として,できるだけ発声機能を存続させんがために部分切除を行い,不幸にして再発をおこした場合に全摘出術を施行する.そして広範囲にわたり皮弁を作成して下咽頭成形を行う.また食道入口部腫瘍には,喉頭摘除後に食道再建術を施行する.下咽頭胃吻合術を行う.以上のような手術的操作をうけた者は,普通の喉摘者に比してはじめから手術的ハンデをもっていて,食道発声の習得には著しい障害となる.こういった人たちには,むしろ発声補助具をすすめ,その使用による早期の社会復帰を期待している.
また,地方在住の喉摘者では,食道発声のよき指導者がいないために練習するチャンスもなく,器具に頼っている者がかなり多数存在している現状である.
今回は,以上の理由により現在わが国で使用されている発声補助具についてご紹介することにする.
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