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はじめに
車椅子の設計を考える場合,安楽性の追求のために人間工学的研究から推奨されている“いすの条件”が,障害者にも適用できるのか,そして褥瘡予防の問題を同時に考慮した場合,その条件をどの様に変える必要があるのかを探ることを目的として研究を行っている.
車椅子の“いす”としての機能に着目すると,人間工学的研究1)から明らかにされているいくつかの事実と対比して考えることができる.事務用いすでは,背あての中間の第5腰椎上部附近に,ゆるやかな凸型彎曲がありこれより下部の垂直支持面は骨盤の傾斜を支え,上方の傾斜部は休息姿勢時に上体を支えるのに役立っている.座りごこちの良いいすの条件は,座背角度が90°から110°のあいだで,自由な動きを許す比較的平らな座面をもち,坐骨結節と仙尾椎のような固いわずかな部分で体重を支えるのが良いと報告されている.
座る時の姿勢については花岡は,体圧分布の観察より,両坐骨結節の2点支持から,仙尾椎でも支持を始める状態,即ち,2点支持から3点支持へ移行する時が座り良いと報告している.
脊髄損傷者の使用する車椅子では,上述のような安楽性の追求にとどまらず,操作性や走行性,さらには,褥瘡予防への配慮を加える必要がある.褥瘡に関して,Kosiak2~4)は,皮膚潰瘍発生には,圧の大きさと加圧時間に相関関係があり,82〔g/cm2〕(60mmHg)の低い圧力でも1時間加え続けると細胞組織に病理学的変化がみられたと報告している.
現状では褥瘡予防のための一般的方法は,圧を広く分散させる目的で各種クッション5)を使用することであり,同じ褥瘡予防の目的で車いすの基本的設計にまで言及した研究は少ない.
今回の報告では,基礎的な問題を取り上げて,以下の4項目に着目した.
1)座にかかる圧力分布を測定するシステムの精度の確認.
2)健常者と脊髄損傷者における相違.
3)脊髄損傷者において,損傷レベルによる相違.
4)褥瘡を発現させやすい姿勢の検討.
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