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Ⅰ.“痛みの心身医学とリハ”概説
痛みは“純粋な感覚として痛みの受容”と“痛みに対する反応”の2面より成り1);前者は各個人ともほぼ一定しているが,後者にはかなり個人差がある2).すなわち,痛み反応の閾値は,不安・恐怖・情緒不安定・疲労などで低下して,大げさな反応を示し3);そのほか,年齢・人種・性・皮膚温・発汗などでも閾値は変動するとされている4).じっさい,神経症者は,痛みの感覚閾値では正常人と差はないが,反応閾値では低値を示すという5).しかし,1)痛みの期間が心理的要素を増すことも間違いなく,急性期における“痛みの適切な初期治療と“良好な医師患者関係による医原性因子の除去”が肝要である6),したがって,2)一般に,慢性化した痛みほど心理的に問題となり,それが骨筋肉系に現われる場合は,大ていリハと深いかかわりがある(表1).そして表1に示す各疾患に対する心理的配慮は,またそのまま疼痛対策となる.すなわちそのアプローチとしては,杉田7)によると,“骨筋肉系の心身症(表1のA. B. がこれに相当する)は洞察を目標とした心理療法にはなかなか反応せず,むしろ言葉よりも身体に意味があり,作業療法などを主体とした治療に,心理療法を加え;性格を変えるよりも,まず実生活で自ら症状をコントロールして行けるような生活技術を指導して行くのがよい”としている.ところで,3)身体障害の場合は(表1のC. D. では),痛みそのものがリハの進行を妨害するばかりでなく,さらに依存の欲求・自己中心性・二次的な代償性の利得への執着などの情緒的な変化をもひき起こす8)(表2参照).したがって,上記2で述べたようなアプローチも,もちろん必要であるが,さらに当初から“リハの心理的側面”全般を十分考慮することが,そのまま痛みのための心理的合併症の予防や痛みのコントロールにつながるといえる(各論のCに脊髄損傷の場合について述べる).
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