ねたきり老人訪問看護―リハビリテーション看護の一試み

Visiting Nurse for Bed-Confined Elders.

はじめに

　これまでの保健医療は，医療機関中心になされ，患者は医療機関を訪ねて通院治療を受けるか，通院では治療が困難な場合は，医療機関に一定期間宿泊をして（入院）医療を受けるのが通例になっている．例外として，入院施設のない医療機関にかかっている患者や急性の疾病で医療機関に出向くことができない場合は，医師が患家を訪問する往診と呼ばれる制度が病院の歴史より古くからある．近年の疾病構造は，単純に疾病治療だけに専念すれば後顧の憂いなく安心して生涯が過ごせる時代ではなくなって，疾病の発症の時期が不明確であり，治癒した時期もはっきりせず，日常生活は当り前にしていても，服薬を続けていたり，疾病は安定して治癒したといわれるが，何らかの機能障害を残しながら，医療機関から解放されたり，高齢者人口の増加に伴い医療より介護を要するなど，複雑多様化してきている．

　このような疾病構造の変化によって，保健医療のあり方も，総合的・包括的医療が提唱され，地域保健・地域医療など，地域ぐるみで保健・医療・福祉が徐々にではあるが考えられるようになってきている．看護界でも入院している患者だけでなく，家庭にいる病人に対しても，家族の看護だけにゆだねるのではなく，看護の専門家の立場から，安楽なすごし方，皮膚の清潔法，食事の与え方，排泄の介護，衣服（寝衣・寝具）の調整，投薬についての注意，病状の観察または医師への連絡，症状に対する看護法など適切な指導助言ができなければならないという方向に目をむけてきている．