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私が西独に留学していたときのことである.病室で食事のとき配膳しているのが看護婦でも病棟婦でもない数人の青年達であるのに気づいた.ある日彼らの一人と話すことができたのであなた方はどういった職種の人であるかを尋ねた.彼はいう「私は医学部の学生で,現在臨床医学を学ぶ学年である.ドイツでは医師になろうとする者はみんな医学部を卒業するまでに,休暇を利用して6ヵ月間,病院,老人ホーム,障害者施設などで奉仕活動をすることを義務づけられている.この義務は看護婦,PT,OT,福祉司,心理判定員など将来公共の福祉に従事する職業につこうとする者にすべてある.あなたがみかけた青年達のある者は徴兵義務をことわった代りにある期間ここで奉仕をしている.私自身のことをいえば,大学に入り医学をやっているうち,将来リハビリテーションをしようと思うようになったので,途中で2年間神学を学んだ.そのため医師になるのは少しおくれるが」と,その後私はクリニックの福祉司と知りあいになり,ドイツでの奉仕活動のことをたずねてみた.彼女は「もちろんドイツでも一般市民,学生などの奉仕活動はあるが,その主力はあなたがきかれた義務づけられた奉仕活動である」と教えてくれた.私の下宿の娘は職業学校の教師になるため教育大学にいっていた.その娘にこの2つの話をしたところ,彼女も教師の資格をとるまでに,やはりこの義務のあることを教えてくれた.奉仕の期間全く無償ではないようである.
帰国後一度私の勤務する大学の学生で奉仕活動をしているグループからリハビリテーションの話をしてくれないかとたのまれたことがある.そのとき彼らの活動の内容をたずねたところ,夏休みに肢体不自由児施設の子供達がキャンプをするとき,その手伝いに3日間ほどいったということであった.また私の町内でも婦人会の人達の有志が一年に数回施設にオムツの洗濯にいっていることも知った.最近数年私の住んでいる県が,ボランティア活動の育成に力をいれ,啓蒙をしている.
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