特集 保健・医療のボランティア活動
愛育班活動の中のボランティア
片平 泉
1
Izumi KATAHIRA
1
1山梨県愛育連合会
pp.649-653
発行日 1986年10月15日
Published Date 1986/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207341
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■はじめに
人生の新しい門出の結婚に引き続き,夫婦にとっては大きな喜びである出産がある.その出産は女性にとっては最大の喜びとともに不安も大きい.最初は,誰しもみめかたち良い頭の良い子をと願い,また女の子がほしい,男の子がほしい,と胸をふくらませているが,月数も進み,体の変化が起こる中に「もし奇形の子どもが生まれたらどうしよう」という心境に変わる.こんな時近所の経験者である婦人達が,「誰でもがその頃は,そう思うの,でもみんな良い子を生んでいますよ」と,談笑のなかで受け止めてくれたり,「もうお医者さんには行って来たの? 母子手帳は役場から戴いたの?」など,日常会話を交わしたり,保健婦さんに連絡してやったり,母乳哺育が子どもにとっては一番よい事や,それには乳房の手入れが必要な事などを話し,月が満ち,無事出産にこぎつけるまでの相談相手になったり,また生まれた赤ちゃんや産婦の成長と肥立ちを見守ったり,周囲の交わりなどに気を配ってやる.こんな活動を組織を作って行っているのが愛育班活動である.もちろんこれは1例に過ぎないが,こうして地域の婦人達が,日常生活の場で,母子を中心として,家族の健康,地域の健康を願って,自らのため,他を見守るための組織活動を行っている.そしてこの活動の底を脈々と流れるものはひとえに隣人愛であり,愛育の心なくしては実践はあり得ない.私は常に愛育班活動は全くボランティア活動そのものであると思っている.
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