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CVDをはじめとする中枢神経(以下CNS)障害による各種の神経症状(運動麻痺・知覚障害・視野障害・失語症等)は,CNS損傷後ある程度の改善がみられることは周知の事実である.脳の機能回復機序についての歴史的変遷をみると,Jackson,H.の“Compensation or Representaion theory”,Munk,H.の“substitution theory”に始まり,今世紀に入って,Von Monakowの“Diaschisis”などがある.最近は“reorganization theory”が唱えられ,脳の形態学上の再構築におけるリハ(運動機能訓練・言語訓練)の重要性が説かれている.ここにおいて“中枢神経症状の機能の回復とその回復機構,さらにはそれに伴うCNSの形態上・構造上の変化の関係“を知ることは,リハビリテーションに携わるものにとって有意義なことであろう.
従来,この方面での基礎的・臨床的研究者が少ないのは,1つに“哺乳動物のCNSは一度変性すると再生はしない”という,古典的神経病理学的慨念に固執しすぎているためである.これまで,この方面の研究に携わってきた少数の神経解剖学者・神経生理学者は,CNS損傷後のCNSの形態的・機能的変化を組織学・組織化学・細胞学・電気生理学的見地からアプローチし,新知見を見出してきたが,それを実際の機能(行動)と結びつけることはできないでいる.一方,神経学・リハ医学・心理学から行動科学を研究するグループは,CNS損傷後の神経症状の回復を行動科学・運動学・社会心理学・実験心理学的な見地からとらえてきた.しかし,その背景をなすと推定されるCNSの解剖学的・生理学的・生化学的変革について知ることができないでいる.
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