- 有料閲覧
- 文献概要
下肢装具のかなめが靴である点については誰も異論をとなえることはないであろう.それほど大切な靴型装具ではあるが,現在はたしてわれわれはそれにふさわしい扱いをしているかどうか多いに疑問がある.最近の患者は,単に機能だけでなく外観についてもさまざまな注文をつけることがしばしばであるが,本邦の製作技術者がこれらのニーズに充分対応できるだけの技術をもっているのかどうかを感ずるのは私だけであろうか?
戦後におけるわが国の生活様式は大きく変化したが,靴に関する一般の人々の関心は意外に低いのが実状である,身体障害者に対する靴の知識はこれまでLichtやA.A.O.S. 編のOrthopaedic Appliances Atlas等アメリカから伝えられたもの一辺倒であったといっても過言ではない.ところでヨーロッパ,とりわけドイツのリハビリテーションセンターや整形外科病院を訪れられた人は,病院の一隅に設けられた整形外科矯正靴製作工房に足をとめられた経験をお持ちであろう.室内にはおびただしい足のギプスモデルがきちんと整理されてあり,必要に応じて患者の新しい靴の製作に供されている.またさまざまに変形した靴の矯正にはKorkbettungの手法が用いられている.実際に作られた靴を手にしてみると,本邦のものに比べて大変軽く,はきごこちもよさそうである.いわばドイツの矯正靴には伝統の重みが伝わっているともいえよう.ドイツでは整形外科矯正靴の製作は,義肢装具とともに専門分野として確立されており,すぐれた製作技術者にはOrthopädieschuhmqcherei-meisterの称号がさずけられ,社会的経済的地位が保障されている.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.