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書名の通り装具その他の書である,いささか旧いのが気になるが一読の価値のあるものとしておすすめする,S.Lichtの編集によるリハビリテーション医学叢書の第9巻である.分担執筆の形をとっている.はじめに,Hinesの装具総論の原則が述べられている.電動装具にまでふれている.述べているのはあくまでBraceなどは能動的にダイナミックに製作され装着に関しても患者のモチベーションをたかめることを強調している.駆幹装具にしても数多くの型式が紹介され簡単ではあるが鳥瞰することができる.次にSmithらが装具療法のメカニックを述べている.他の書にみない興味ある考え方が展開されている.長下肢装具については膝関節における下腿の回旋も十分考慮した装具が望ましいが,この点も力学的に述べられ稗益するところ大きい.第3章はBenderによる外力駆動と制御の問題が採り上げられている.私どもも従来より電動義肢の開発研究を推進してきたが当初参考になるところ大きく導入すべき外力の特性などが要領よくまとめられている.次はRosenbergによる装具の金属についてである.次の章にはO'Flahertyによる皮材料の問題が,更にHamptonによりゴム材の問題がとりあげられ,私どもが日常装具屋さんにまかせきりにする材料について基礎的知識をえることができる.さらにLichtが装具の製作についてその組み立て方などについての原則を要領よく述べられている.第9章以下は各論ともいうべきもので新しい装具は特に述べられていないが広くしらしめるという点に重点をおいて論述されている.すなわち,第9章はCrabbeにより頸部の装具,Longによる上肢装具について述べられている.とくに手,手指の装具については詳述され,他の書にみない気をくばった書き方をして納得させてくれる.写真付図がないのが残念ではあるが,図のイラストで十分理解できる.外力駆動装具も刊行の時点までに開発されたものが広く採り入れられている.次にDeaverによる下肢装具これは一寸残念ながら少し簡単すぎる.もっと広い問題を採り上げてほしいと思われるが,アラインメントの悪さがいかに影響するかを強調している点は見逃せない.次は脊柱装具でLugasの筆になるが,これも少し簡単に述べられている点が少なくない.しかし,椎間板に与える影響などは詳述され注意を改めて喚起させてくれる.Bountの側彎症に対するブレイシングは力作であると考えられ,よく理解できる.さらにHarrisがリウマチに対するブラスタースプリントにつき述べこれも興味がある.プラスチック材などのめざましい発達によりキャストがとり残される傾向にあるが,採用してよいキャストスプリントを教えてくれる.次はGuckerが弱化に対するブレイシングの原則を述べ,どうして弱化を補填するかを示唆してくれる.Callietの痙性に対する装具療法について述べているが例の同じ著者の“痛み”シリーズで述べている域を脱しないのは惜しい.さらにDr. に必要なCrabbeによる装具の外科的手術への応用という一章は他に類をみないが簡単でありもう少し述べてほしい点である.次に本書の最も特異なZamoskyによる靴の問題,さらにKiteによる小児靴の問題がある.本邦書,また外国書でも,この問題は靴屋まかせということになっているが,この問題を詳述してくれている80頁位がこのためにさかれているが実によく理解でき,靴の大家になったような気をいだかしてくれる.さらに以下はDeaverの杖,ウォーカーの章があり,Kamenetzによる車椅子の問題が次にとり上げられている.これらは類書に述べられている域にとどまるが,知識を確める意味での一読の価値はある.以下は装具,補助装置などに属するものであり,Peszcznskiによる障害者のハウジング,Redfordによるベッド,テーブルなどが述べられている.これらもリハビリテーション関係者としての基礎的な概念を供給してくれる.さらにレスピレターこの問題は他の類書に述べられることが少ないのであるが,Dailの記述はまことに稗益するところ大きいものと考えられる.最後にBrownによる衣服,Hopkinsによる自助・介助具,Talbotによる自動車の問題も見逃せない.独特な工夫などが紹介され,障害者の「車」への要求が高まりつつある現在,一読の価値がある.
以上が本書の概観である.同類の書が多く出版されてはいるが,筆者(私)の強調した点を“つっこんで考えてみたい”という読者に一読をおすすめする.
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