書評
高柳哲也 編「介助犬を知る―肢体不自由者の自立のために」
安藤 徳彦
1
1横浜市立大学総合医療センターリハビリテーション科
pp.348
発行日 2003年4月10日
Published Date 2003/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102693
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介助犬を正しい制度下で普及させたいと願う人々の強い意志がこの学際的な書物を刊行させた.日本への介助犬の初来日は1992年であり,最初の訓練は1995年に始まり,2002年には身体障害者補助犬法案が可決成立した.補助犬は盲導犬,聴導犬,介助犬を総称する呼称である.導入からわずか10年で法が制定されたのは,必要性が関係者に理解されたからだが,制度を正しく確立するためには多数職種が連携して処方・訓練・認定方法を確立し,優秀な犬種と訓練士を養成し,制度を普及させる必要があると本書は主張している.
介助犬の訓練は基本訓練,社会性訓練,介助動作訓練を単独で行った後に,使用者との合同練習,使用者の自主練習,最終認定,そして継続指導も必要である.しかし現在の訓練士養成にはカリキュラムも資格制度もなく,獣医学・公衆衛生学・リハビリテーション医学の知識が不十分で,訓練の方法・技術・程度,使用者への指導,継続指導有無等も統一性を欠くという.一方,介助犬の獣医学的問題点として,股関節形成不全,進行性網膜萎縮,てんかんが多いのだが,血統書発行や介助犬選択に際してスクリーニング制度がないことも本書では指摘されている.
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