書評
庄本泰治(編)「最新物理療法の臨床適応」
佐伯 覚
1
1産業医科大学若松病院リハビリテーション科
pp.1115
発行日 2012年8月10日
Published Date 2012/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102630
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物理療法(以下,物療)は,運動療法と並ぶ理学療法の重要な治療手技である.わが国の理学療法士及び作業療法士法にも明確に定められている.私がリハビリテーションの臨床に進んだ25年前には,温熱療法など物理療法に多くの頁を割いた「リハビリテーション技術全書(第2版,服部一郎著,医学書院刊)」などで詳細に勉強した記憶がある.しかし,最近のリハビリテーション関連のテキストブックでは,物療の項目はあっても記載内容が極端に少なくなっている.日常の臨床では,ホットパックをはじめとする温熱療法,牽引治療などが運動療法と併用して実施されていることが多いが,物療は経験によっている部分も多く,エビデンスが十分でないとの指摘もある.そのため,物療は運動療法に比べて軽視されがちである.
本書は,物療のうち,近年特にエビデンスの蓄積が多く今後の発展も期待される電気療法,超音波療法およびレーザー療法に限定した解説書である.本書の特徴として,各疾患や障害から各療法の適応,手技,注意点やエビデンスなどが述べられている.経頭蓋直流電気刺激(tDCS)などの最新の療法も頁を割いて詳細に解説しているのには驚いた.本来なら,使用頻度の高い他の物療―ホットパックや牽引など―も取り上げるべきと考えるが,筆者らは上記3療法のみに限った理由として,これらの機器を所持している施設も増えてきたが,最新の研究結果や実際の治療技術を詳細に解説している書籍がほとんどなく,その結果,これらの物療が適切に実施されていないためとしている.tDCSもわが国の薬事法で未承認であるが,今後の電気療法の可能性を拡大するものとして含めたとしている.
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