正常圧水頭症を合併した重度脳卒中例におけるシャント不全の診断―FAC（Functional Ambulation Categories Classification）の有用性と脳圧コントロールの意義

Usefulness of Functional Ambulation Categories Classification（FAC）in evaluation of shunt malfunction with normal pressure hydrocephalus in severe stroke：a case report.

はじめに

　正常圧水頭症（normal pressure hydrocephalus；NPH）を有する脳卒中例は診断や治療方針に難渋する代表的疾患である．それは，残存する機能障害が現疾患による脳障害なのか，脳圧コントロール不良に起因するNPH症状なのか，判然としないからである．さらに，NPHの脳圧コントロールは画像所見と歩行機能，認知機能からその適正度を計るのが一般的だが，脳卒中に合併したNPH患者は現疾患による脳実質由来の障害も有しており，歩行や認知機能の評価自体が不能な例も存在する．したがって，障害の重症度によらずすべてのNPH例において適切な脳圧を評価しうる検査バッテリーが必要である．

　Functional Ambulation Categories Classification（FAC，表）^1）は介助量や歩行の質によって分類する機能評価の一つであり，歩行不能例においてもその介助量を定量化することで歩行機能を点数化できるという特徴をもつ．このたびわれわれは，重度右片麻痺および全失語症を合併した歩行不能，認知機能評価不能のくも膜下出血例において，画像とともにFACを評価し，介助量の変化をもとにシャント不全の診断や適切な脳圧設定を行うことができたため，文献的考察を含め報告する．