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米国におけるリハビリテーション医学・近代史について書かれた待望の書「戦争,政治,慈善事業―リハビリテーション医学の歴史」が出版された.著者は弁護士のRichard Verville,出版社はUniversity Press of America, Inc. である.1970年以前の歴史に関する書籍はすでにあったが,1970年以後について書かれたものはまだなかった.私は多くの先輩,たとえば,Betts,Granger,Ditunno医師らに尋ねたが,現在作成中でもう少しでできるそうだと聞いてから10年になる.280頁になる本で一気に読んだが,発行禁止となりそうな多くの個人情報とエピソードが記載されていて驚いた.私のように米国でリハビリテーション教育を受け,診療した者はうわさとして聞いていても,個人情報のため,公にできない多くの秘話がある.弁護士である著者はそれらを最大限まで書き,見事にその法の問題を超え,10年がかりでまとめ上げた.世界のリハビリテーション関係者にとって必読の書であろう.
著者は現在の米国で「リハビリテーション革命」が起きているとしている.すなわち,1990年に発効されたADA(アメリカ障害者法)と1983年のMedicareにおけるリハビリテーションのDRG/PPS(Diagnosis Related Group/Prospective Payment System)からの除外,そして,2002年のリハビリテーション独自の支払い方法IRF/PPS(Inpatient Rehabilitation Facility/Prospective Payment System)の開始は米国リハビリテーション界に革命を起こした.ここまでに至る過程のうち,本書では1970~1990年までの20年間を述べている.医療専門,特にリハビリテーション医療の弁護士であるため,医療や医師に限られがちな歴史観から,より広く法律,制度,政治,社会運動,慈善事業などについても記載されており,わかりにくい現在の米国医療制度を理解するためにも大変役立つ本である.PT,OT,ST,MSW,医療行政に関わる人たち,また法律家にも必読の本であろう.
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